場所 | 川沿生活館 |
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講師 | 大須賀 るえ子 |
OPEN | 日曜日(6月5日〜10月2日の全16回) |
TIME | 9:30-12:30 |
対象 | 白老アイヌ協会会員 |
主催者 | 白老アイヌ協会 |
委託元 | 公益財団法人 アイヌ民族文化財団 |
目次
大須賀るえ子先生
アイヌ語上級講座の講師は、白老町在住のアイヌ文化とアイヌ語の研究者である大須賀るえ子先生です。
父方の祖父は白老コタン生まれの宮本イカシマトクで、もともと熊狩りをしていた人よ。
その妻であった祖母は宮本サキといい、ユカㇻの伝承者だったの。
育てた小熊は25-6頭に上り、イオマンテ(熊の霊送り)の儀式も数多く行いました。
大須賀先生も、昔から儀式やアイヌ語に親しんできたのですか?
祖父母の記憶はあるけれど、自分から積極的にアイヌ文化に関わろうとは思っていなかったの。
50歳までは、ポロトコタンで木彫グマを売る仕事をしていたけど…。
その時は、自分のルーツであるアイヌ民族の血を、誇らしく思うことはできなかったわ。
しかし、50歳になってアイヌ語教室に通い初め、松永タケ媼や野本亀男翁に師事。
アイヌの口承文芸を読むようになってから、大須賀先生の考え方は大きく変わりました。
ユカㇻを読んで、こんなに面白いんだ!ってびっくりしたの。
私の先祖は、こんなに素晴らしい文化を持っていたっていうのが分かって、自分のルーツが誇りに思えるようになったのよ。
アイヌのユカㇻは、ギリシャのオデュッセイアやインドのラーマーヤナと並ぶ、世界の5大叙事詩ですものね!
録音や文章にして、記録に残すことの大切さを感じますね。
60歳の時にはラジオのアイヌ語講座を担当し、2年間の大学の先生が講師をされたアイヌ語指導者育成講座にも参加しました。
その時に、アイヌ語白老方言が体系づけられていないことに危機感を抱き、後の「白老方言辞典」の出版に繋がりました。
大須賀先生は、この講座のほかに、「白老楽しく・やさしいアイヌ語教室」も主催されています。
授業では何をするの?
最初にカードを使った日常会話の練習があります。
「こんにちは」
「これは何ですか?」など、基本的な会話を覚えます。
カムイユカㇻをCDで聞いて、歌います
カムイユカㇻは、知里幸恵が初めて文字化した「アイヌ神謡集」が有名です。
ユカㇻはリズムがあり、歌に近いものですので、CDを聞いて目で追いかけます。
白老地方の伝承者である上野ムイテクンさんのうたうユカㇻを聴いたりもします。
ウエペケㇾを読みます
ウエペケㇾは、歌ではなくアイヌ語の口承で伝えられた「散文説話」です。
日本語の訳を読んでいると、アイヌ文化の世界観が見えてきます。
結婚は、お見合いもあれば、恋愛結婚もあったこと。
飢饉というのが一番恐ろしいもので、そのために色々な備えをしていたこと。
子孫ができることは、神様からの授かり物であったこと…。
食事、習慣、家のつくり、時に戦争やケンカなど、色々なアイヌ文化の背景が知れて、とても面白いです!
上の写真の本は、「白老楽しく・やさしいアイヌ語教室」が、アルファベットで書かれたアイヌ語を1つ1つ解読し、日本語訳したものです。
アイヌ語上級講座では、この日本語訳を読んで、アイヌ文化について理解を深めています。
ユカㇻとウエペケㇾって、何が違うんですか?
アイヌ口承文芸には、カムイユカㇻ(神謡)、アイヌユカㇻ(英雄叙事詩)、ウエペケㇾ(散文説話)という3種類があるの。
●カムイユカㇻはサケヘ(繰り返し句)をもち、メロディがあります。
主人公はカムイ(神)つまり動物です。
●アイヌユカㇻは語り手自身のメロディでどの話も謡っていきます。
レプニと呼ばれる棒で拍子を取り、ヘッチェという合いの手を入れます。
主人公は人間の少年ですが、超人的能力を持ちます。
●ウエペケㇾはメロディをつけず日常会話に近い語り口で、主に体験談を子孫に語り伝えます。
神と人間が密接に関わって物語が展開していきます。
ウエペケㇾはユカㇻに比べると、あまり注目されてこなかったの。
でも、私はこのウエペケㇾに焦点を当てています。
なぜなら、ウエペケㇾはとっても面白いから!
本当に、とっても面白いです!
人間関係や生活習慣を細かく描写しているので、アイヌ文化の精神に触れることができますね!