山内さんと出会ったのは、公益財団法人北海道アイヌ協会が主催する「アイヌ古式舞踊講座」の講師としてでした。

歌声の美しさと、気品のあるイオマンテリㇺセの踊りに、うっとりしたのを覚えています。
だから、私は山内さんは踊りを専門にしているのだと思っていましたが…
「白老アイヌの手仕事展」で出品していた刺繍作品を見て、びっくり!


山内さんは、刺繍もすごくお上手なんですね!


私は旧アイヌ民族博物館(ポロト)で9年間働いてたんだけど、そこで踊りも刺繍も覚えたの。
アイヌ刺繍に出会ったのは、2003年に参加した機動訓練の時。
その翌年の2004年にポロトに入って、まず踊りや座学の講習を受けました。
最初は歌と踊りをメインにしていたんだけど、踊りの合間に手仕事もしていました。

本州に出張して、踊りを披露したりもしたんですよね。

でもだんだんと、踊るよりもお直しや刺繍をすることの方が多くなっていったの。
6〜7年目の半年間、河岸麗子先生にキナ(ゴザ)編みを教わったんだけど、絵を描くのが楽しかったのを覚えています。
下絵と出来上がりは全然違っていて、出来上がったときにすごく感動しました。
作ったキナを、儀式の時にポロチセの囲炉裏に敷いてもらった時は、嬉しかったなあ。


山内さんの刺繍の色合いって、ビビッドで南国調で、個性的ですよね。

色合いって難しいのよ。
伝統的なものって白がメインのものが多いんだけど、お客さんの目は鮮やかな色の方にいくでしょ。
特に、海外のお客さんは派手なものを好む傾向があって、そこに合わせていったの。
でも、最初は明るい色を使うのに抵抗があったのよ。

山内さんはデザインも個性的だと思いますが、どうやって考えているんですか?


私が刺繍を初めて習ったのは機動訓練だったんだけど…。
先生に「若い人の発想で絵を描いて」って言われたの。
最初はアイヌ刺繍のことは何も知らないから、私も怖いもの無しで描けた。
ポロトっていうのは、本当に色んな勉強や挑戦をさせてもらった場所だよね。
講師として教えるときは、生徒さんが縫いやすいようにデザインしています。
例えば、初心者なら、ぐるっと一周回れば出来上がるように作ったり。


わあ、本当だ!
踊りだけでなく、刺繍の講師もしていたんですね。

白老アイヌ協会が運営する講座では、2年間講師を務めました。
それから、(一社)白老モシリの講師として、小学校やチキサニに派遣されたりしました。
教えた踊りをチェㇷ゚祭で発表したり、家庭科の授業で刺繍を教えたり、ムックㇼを教えたり。


踊りも教えられるし、刺繍も教えられるし…。
すごいと思います!
山内さんは踊りと刺繍って、どっちが好きですか?

私は、子供が小さい頃は子供服を作るのにハマったし、作るのが好きなんだと思うの。
でも、アイヌ刺繍には、はじめは特に興味があったわけじゃなくて…。
機動訓練も、ポロトに入ったのも、知人に誘われたからなの。
アイヌ古式舞踊もやったことがなくて、最初は学校で習った娘に、イオマンテリㇺセを教わったのよ!
ポロトをやめてからは、しばらく刺繍にも携わってなかったんだけど、欲しいっていう人がいたら作ってプレゼントしていて…。
だから私は、「自分が好きだからやる!」っていうタイプじゃないのかもしれない。
でも、やってるうちに、気づくと夢中になってるの。

色もデザインも、買う人や作る人に合わせて考えているのと同じですね。
でも、それでも「山内さんらしさ」がすごく伝わってきます。

「すぐにチャコ(山内さんの愛称)の作品だって分かった」って、よく言われます。
結局、作っても誰かにあげちゃうから、手元に作品が全然残っていないの。
これからは、なるべく手元に作品を残してみようと思います!

