私が河岸洋美さんと出会ったのは、アイヌ刺繍講座の先生としてでした。
すごく絵を描くのが上手な先生だと思ったのを覚えています。
作り物やアイヌ文様のデザインをするのは好きですよ。
でも、ボタン付けもできないくらい、縫い物は大嫌いだったの!
ええっ!? ウソですよね!?
こんなに下絵も精巧で、デザインも洗練されてるのに…。
ほんとほんと。
だから、自分が刺繍できるなんて、思ってなかったの。
でもね、旧アイヌ民族博物館で刺繍を眺めては、綺麗だなぁと思ってはいたの。
へえ〜。
洋美さんがどうやってアイヌ刺繍を始めたか、聞いてみたいです!
目次
刺繍との出会い
初めてアイヌ刺繍を習ったのは、職業訓練で林としこ先生に教わったときのこと。
その後、働いて子育てをしながら、いくつかの短期の刺繍講座に参加しました。
若い頃は、刺繍サークルに通ったりする時間がなかったのです。
ところが30代の時、3ヶ月の職業訓練で刺繍を習った後、旧アイヌ民族博物館の複製事業があることを知ります。
河岸さんは思い切って仕事を辞めて事業に応募しました。
本当は、応募条件に「着物を5枚以上縫った経験がある人」とか条件があったんだけど…。
私は、1枚も縫ったことがなかったの。
だけど、半纏やテーブルセンターは作ったことがあったから、作品を全部持って、
「仕事も辞めました!」って面接に行って、採用されたの。
すごい!思い切って、アイヌ刺繍の世界に飛び込んだんですね!
そこで河岸麗子さんに教わりながら、古い着物を針目の数まで忠実に再現したことは、とても良い経験になりました。
でも、経済的な問題で、2年後には複製の仕事はやめて、別の仕事に復帰したんだけどね。
その後は、またいろんな講座に参加しながら、技術を磨いてきたんですよね。
習うときは、講座で教わる作品と同じものを家でも作るので、いつも2つ作ってると聞いて、驚きました!
「そうしないと、覚えない」って先生に言われたのを、ずっと守ってるの。
すごく努力家なんですね…。
私なんて、1つの作品でもついていけないことがほとんどです。
刺繍は、時間がかかりますから…。
私は、子育ても仕事もあったから、短期の講座しか参加できなかったんだけどね。
ただその分、色んな先生に教わることはできたの。
そして、色んな先生に習うことで、自分の刺繍も変わってきたの。
昔は、左右対称で針目も細かくなければ嫌だったんだけど…。
最近は、昔ながらの絵の描き方やデザインの方法を学ぶことで、素朴な表現も好きになってきたの!
そんな河岸さんは現在では、コンテストなどで素晴らしい賞を多数受賞しています。
受賞歴
2016年 伝統工芸品部門 優秀賞(かでる賞)ルウンペ(木綿衣)
2017年 伝統工芸品部門 奨励賞 ルウンペ(木綿衣)
2020年 一般工芸品部門 最優秀賞(北海道知事賞)タペストリー
革工芸との出会い
革工芸に初めて出会ったのは、30年ほど前のこと。
アイヌ協会の職業訓練で3ヶ月間、革工芸を白老在住の塙(はなわ)先生に習ったのです。
その後、講座に参加したメンバーが立ち上げた革工芸サークルを1年間続けました。
しかし、子育て中の河岸さんにとって、夜6時から始まるサークルに参加するのは負担となり、続けることができず、独学で革工芸の制作を続けていました。
でもね、白老に星野リゾートホテル「界ポロト」ができた時、その30年前の作品が担当の方の目にとまったのね。
「まさか」とは思ったけど、とてもありがたい話なので、作品を作ることにしました。
それで、また革工芸の作品を作るようになったんですね!
でもブランクがあるから、改めて革工芸の新しい技術とか磨きの技法とか、革の性質を勉強し直してるの。
今は、白老の折内先生と苫小牧 Mikos Smile の大山先生にご指導いただいてます。
しかもね、界ポロトの作品を見たウポポイの職員さんが、「ウポポイに置く商品として、何か革工芸の作品を作ってはどうだろうか?」と提案してくれたの。
だから今、ウポポイではの革のブローチと、額入りの刺繍作品を置かせていただいてます。
アイヌ協会での活動
昔はウタリ協会と呼ばれていた協会で、河岸さんは婦人部の中で忙しく活動してきました。
若い人が少なかったこともあり、イベントの手伝いも積極的に行いました。
今は9月のチェㇷ゚祭も1日だけだけど、昔は2日間あって、参加者みんなで踊ったものだったの。
婦人部総会があったりするときも、一風呂浴びた後にみんなで楽しく踊ってたのよ。
若い時から、ずっとアイヌ協会の活動にも関わってきたんですね。
アイヌ文化に造詣が深いからこそ、いろんな素材で、素晴らしい作品が作れるんですね!
展示歴
チキサニで吉国幸子さんと一緒に二人展「コテンコテン」を行いました。
一人なら個展なので、二人で個展x個展 という可愛いネーミングです。
そのほか、2022年にウポポイでの展示販売、白老アイヌ協会事務所「ノㇱキ」、かふぇ「ピラサレ」などでもグループ展を行っています。